たくさん、たくさん。 [自作の詩]
たくさん たくさん 殺してきました
彼女を助けようかと思う心も
彼に同情する心も
たくさん たくさん
あの人を支えようかと思う心も
他の人を思案する心も
たくさん たくさん
気遣いも
悲しむのも
たくさん たくさん
好きだという心さえ
殺してきました
未来に進みたいという思いだけは
捨てないつもりで
今まで駆け抜けた そのはずなのに
屍こそ 転がっていないけれど
振り返った後ろは 何故か不毛の荒野
幾つもの悲しみも幸せも味わい
駆け抜けてきました
たくさん得た そのはずなのに
嘲りこそ 踏み潰してきたけれど
振り返った後ろは 何故か嫌悪の視線
全部忘れて
全部殺して
たくさん たくさん
失ってきたらしい
嫌だ このまま終るのは
たくさんの人を内で殺したまま
自分も殺される
怖い このまま終るのは
今からでも変われるでしょうか
たくさん たくさん
チャンス逃してきました
今からでも得られるでしょうか
たくさん たくさん
チャンス掴みたいのです
今からでも好きになれるでしょうか
たくさん たくさん
共に時を過ごしたいのです
オルゴールの音色 [自作の詩]
ゆっくりと蓋を開けると
ほこりっぽい時間の匂いがした
この中には何が詰まっているのだろう
嵌まった宝石のようなガラス細工に胸ときめかせ
愛しい人のことを想って
ため息を漏らした人がいたのだろうか
それとも憎い友を思い出して
歯噛みした人がいたのだろうか
もしかしたら恩人に渡そうとしたまま
逢うことかなわずに
ずっと持っていた人もいるのかもしれない
子どもに贈って
そのまた子どもに
そのまた子どもへ
連綿と受け継がれてきたのかもしれない
もしかしたら価値のあるもので
海賊と一緒にずっと海の上を旅してきたとか
その前は王様が王女様に贈ったのかもしれないとか
もしかしたらスパイの持ち物でどこかに隠された蓋があるんじゃないだろうかとか
いろいろ想像が尽きないけれど
ゆっくりと螺旋を回した
キリキリと音がして
中の歯車が回りだす
一音一音
柔らかく 絶妙に絡み合って
何度聴いても飽きない コンサート
何故か浮かんでくる歌詞
歌おう
そう呼びかけられているようで
眠ろう
そう諭されているようで
沈むよ 夢の底
溶けていくよ はるか彼方
ころころ零れゆく音の切れ端は
まるであなたの足取りのようで
過ぎ去る時を一生懸命に駆ける
あなたの姿を思い浮かべながら
そっと蓋を閉め 塞がれる音と一緒に
思いを封じ込められたのだと 今日もまた
ちょっとだけ安堵する
ユビキリ ノ伍拾陸 [自作小説]
夜風に吹かれた、野原の中。くすくすと楽しげな笑い声が聞こえた。
「なに、笑ってるの」
「うん。お前さんが起きた時、ぼけぼけしとったなあ思て」
「嫌なこと思い出したわね。第一、白梅に言われたくないわ」
「そうかもなあ・・・」
風が賛同するかのように舞い上がる。
途端、梅の甘い匂いが鼻をくすぐった。同じように、誰かの笑い声が微かに聞こえる。
「梅見をしているようじゃ・・・」
「ほんとだ、今日寒いのに。物好きねー」
桔梗がそういった途端、白梅はまた笑い出す。
後ろに佇んでいた桔梗はそれを認めると、少し驚いた様子で目の前の白い頭を見つめた。
「な、なに・・・」
「いや・・・・・・うん、前もこんなことあったなって」
「ふうん」
その横顔は寂しそうだった。
そう思った桔梗は、何でだろうと薄っすら考えたが、答えもとうに考えつくしたもので、やはり一人は寂しいのだろうと結論付ける。といっても、馴れ合う気にはなれなかった。
白梅の髪をまた夜風が揺らす。
桔梗は干渉しようとしなかった。過去の思い出、これからの歩み、何についても白梅の言うことに従った。
けれど実際は、彼女が自分を憎んでいるのだと白梅は知っている。露草がかばった桔梗を繋ぎとめようとして、血を使ったからだ。
生と離れた彼女の時は、血がほんの少しだったせいか僅かな成長をした後、完全に止まってしまっている。
血は芳香となり、時代も手伝ってか彼女に男女問わず群がってくる群集に辟易していた。
死の誘いが誘惑となるも、命を助けられた身ではそれも叶わない。
その事に苦悩していた時期も白梅は知っていた。それは彼自身も体験し、乗り越えてきた時だからだ。
それでも、彼女自身は道連れをつくろうとは思わないらしい。自分のような弱さを見せないなんて、見上げたものだと思った。
まだ幼さが残る少女の横顔を盗み見て、また白梅は遠くを見つめる。
お願い [自作の詩]
どうか お願いします
あなたの笑顔が戻りますように
どうか お願いします
あなたの未来がより良いものに
どうか お願いします
あなたが幸せになりますように
願います
あなたはわたしを気にも留めていないだろうけれど
思いを伝えようとも思わないけれど
せめて せめて願うだけ
あなたがいつまでも 笑っていてくれるようにと
寂しくないように
辛くないように
たとえ悲しいことがあっても
支えてくれる人が きっと現れますようにと
いいことばかりの人生じゃないないけれど
立ちなおるだけの強さを持っているあなただから
わたし 心奪われました
それでも 立ち向かうのが難しい困難に
どうか 打ち勝っていきますように
たとえ 挫けて落ち込むようなことがあったとしても
私だけでも 味方でいたい
そんな 浅はかな願いはきっと叶わないから
歌っていきましょう
あなたの幸を
願いましょう
あなたの歩を
笑い飛ばしましょう
あなたの憂いを
どうか どうか叶いますように
別れ [自作の詩]
こんな日がくるなんて
思いもしなかった
遠くから見つめているだけでもいい
だから ずっと一緒にいたい
そんな切ないネガイさえかなわなかった
あなたがいなくなってしまう
こんな日がくるなんて
思えなかったの
もしかしたらって思うのは最低五年後、十年後
だから こんなに早くいなくなるなんて
こんなことってあるの
あなたがいなくなってしまう
こんな日がくるなんて
思いたくなかった
あいさつして、たまに喋って、目が合うだけで、大騒ぎして
だから 考えたくなかったの
いつも目で追いかけていた
あなたがいなくなってしまう
こんな日がくるなんて
信じられない信じたくない
でも きっと会えるよね
会えなくったって
出会ったことは一生忘れない
あなたがいなくなっても





