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常備薬 [ケロロ軍曹(止)]


 何でだ?
 聞くと、自分でも困ったような顔をして、あの人は言ったっけ。

 

「節分であります!」
 清々しいくらいの晴天。
 雲無しの星空に向けて、人差し指を高々と上げ、もう片方の手を腰に。
 本日節分日和なり。

「節分だねー。はい軍曹、豆」
「ありがとうであります。さて・・・・・・標的確認ヒナタナツミ」
 冬樹から豆を受け取ると、早速お馴染みのぶつける相手をケロロは探した。
 それに気づいたギロロがやめさせようとたしなめる。
「おいケロロ、貴様また夏美を」
「ぬわぁああああああ!? な、なんだ敵襲で、いででっ、あだ!」
「ふっ。アンタごときにやられるモンですか。今年はこっちから行くわよっ。鬼はそと!」
「いーやー! まだ、まだお面被ってないのにぃー!?」
 背後に立った夏美に気づかず、先制攻撃を喰らってしまった、
 我らが隊長ケロロ軍曹は敗北宣言をあげる間もなく、敗れ去ったというわけで。


 その様子を薄暗い地下の研究室で見ていたクルル曹長は、薄く笑った。
 毎年毎年、こう飽きもせずにやれるもんだ。
 豆をまくが豆をぶつける戦闘と化しているのは、
 アレでも一応大人な隊長の人付き合いが良いのか、日向夏美の精神年齢が高いのか。
 そんなこと、考えるまでもなくどっちも頭がオコチャマなせいである。

 当たり前のことを考えて、ふと机の引き出しを引いた。
 お馴染みのラベルの向こう、小さなビンの中で白い錠剤がザラリと音を立てた。
 無意識に、これがまだあるかと在庫を確かめている自分がいる。
 ケロン星にいた頃は、こんな心配しなくてよかったのに。
 そう思うと、なんだか笑える。
 何でこんなことになったのだろう。
 なあ? 日向家最終防衛ラインさん?


 *++☆++*++*++☆++*++*++☆++

「なあに? クルちゃんたら、また何も食べてないの?」
「う~ん・・・・・・隊長としては失格なのでありましょうが、
 軍において健康管理は各個人の問題でありますからなあ。
 我輩はノータッチで分からんのであります」
 それは日向秋、つまり夏美や冬樹の母親が、オレに興味を示したことが始まりだった。
 つってもそんな甘いモンじゃなくて、母親として
 そーいう食生活とかの世話焼きには敏感なんだろう。
 サプリメントとか、デリバリーとかばっかりじゃないゼェ?
 オレだって健康面のこともきちんと考えてる。
 野菜とスパイスが組み合わさったカレー。ボルシチ。その他もろもろ。
 野菜が嫌いなわけじゃないし、果物だって食べる
 ただ『食する』という行為に気が回らないだけ。
 それを聞いた日向秋は、当然のようにブーイングを寄越してきたけど。

「仕方ないわね。じゃあこれ。ケロちゃん、クルちゃんのところに届けておいてくれる?」
「りょ、了解であります、ママ殿!」

 開けてー、クックルくーん。
 なんて呑気な声が聞こえてきたときは、何もかもOFFにして早々に寝てる振りをしたけれど。
 日向秋がいる時は、いつもいつも食事を持ってくるようになった。
 オレも気が向いたときは食べてやったが、
 基本添加物てんこ盛りの物以外は受け付けないんでね。
 ほとんど廃棄処分だ。
 それでも、だんだん日向秋も忙しくなって、オレのことなんかに手を焼いてられなくなったらしい。
 その様子を見て、微かに仕事の割り振りをしたやつに
 賞賛の呪いメールを届けてやりたくなったくらいだが、
 日向秋は、忘れちゃくれなかった。
 最凶のヤツを投入してきやがったというわけだ。
 つまり、センパイ。

 先輩と名のつくのは一応三人。
 隊長とオッサンと忍びだ。
 けれど、そのウチの一人。
 ドロロ先輩は小雪と住んでいることもあって負担だろうということと、
 何より忘れられていたというのが一番の理由で選ばれず、
 隊長は忘れたり誤魔化したりしそうという判断にいたったのだろう。
 まあ編集長としての力量は認めざるを得ない。
 隊長よりよっぽど、らしい、判断だ。
 しかしそれを諸手を挙げて喜ぶ気にはなれなかった。

 オレが危惧していた通り、何がオッサンをそうさせるのか、
 持ち前の頑固さと暑苦しさとしつこさを最大限に発揮し、毎日毎日ラボの前。
 ロックをかけておけば大声でオレの名を呼ばわり、返事をするまで動こうとしない。
 拒否すれば、力ずくでも飯を食べさせようとする。
 とにかくあのオッサンは何が何でも実力行使だ。
 これ以上居座られたら厄介だということで、渋々来るときだけはきちんと食べることにした。
 最近は異常にカレー好きという設定を使い出したから、もうほとんど気やしない。
 カレー万歳。

 しかし何というか・・・・・・よくあのオッサンが料理なんてしようと思ったもんだ。
 何でだ?
 聞いたことはあるが、自分でもよく分からないらしい。
 見てて危なっかしいなんてほざいた時には、夜中にテントへ海鼠をプレゼントしたこともあった。
 何はともあれ、凝るタイプだったらしくて、
 健康に良いクッキングだの、骨粗鬆症予防料理だの本を買い込んで、
 老人向けかよと言いたくなるほど薄い味付けの料理を持ってくる。

 しかもそれに何かかけて食べれるものだったらまだ良い。
 不味いのだ。ものすごく。
 どうしようもないくらいに。
 オッサン自体は味オンチじゃないみたいなのに。
 いつかの隊長が作った雑煮を食べさせられたときを思い出すほどに。
 オレ様が噴き出したくなるほどっていやぁ、相当だぜぇ?
 そういうことがあったから、オレ様特製胃腸薬を常備せざるを得ない羽目に陥ったというわけだ。
 いやあ、懐かしいね。


 らしくない感慨に浸っていると、聞きなれた足音と共に、
 赤い体色をした小柄な姿がモニターに写る。
 ドアを開けてやると、後ろからなにかカサリという音をさせて話しかけてきた。
「クルル・・・・・・」
「何だい?」
「その――節分だから、大豆を食べないかと」
「ハァ?」

 そういや、地球では節分だったな。
 さっき隊長たちが散々騒いでいたのに、物思いにふけっているうち、
 どこかへ押しやってしまっていたらしい。
 怪訝な表情をみて、先輩が焦りだす。
「いや、あの・・・・・・大豆は健康に良いんだ。貴様も外に出て皆と一緒に豆まきを・・・・・・」
「しねぇっての」
「だろう? なら大豆を食べておけ。そうじゃなきゃ俺は動かんぞ。
 お前はまた、ろくに食べていないだろうからな」
 知ったかぶりすんじゃねーよ。
 確かに最近・・・・・・・・・・・・丸二日くらいコーヒーくらいしか飲んでなかったけど。

「分かったよ」
「沢山あるからな。もっと食べろ」
 ほらほら、と嬉しそうに急かす姿はとても隊長と幼馴染には見えない。
 アンタの兄ちゃんとホントは同じ年だっていっても、オレは驚かないぜぇ?
 そんなことを内心考えながら、木と同じような色をした大豆を口に含んだ。
 オレがヘルシー食品を口にする日が来るなんてなあ。

 味覚が反応したその瞬間、ぶっと噴き出す。
 落ちた大豆の色が怪しく見えた。
「んだよ、こりゃあ」
「ああ、トッピングしといたんだ。美味いだろう?
 軍で開発した、一口で栄養を800種類とれるという・・・・・・」
「フザケルのもいい加減にしとけよ、オッサン・・・・・・」
「オッサンと言うなっ。俺はまだまだ・・・・・・クルル?
 何をす・・・・・・のわああ!?」

 全く、いい度胸してるじゃねーか。

 

お題提供 Noina Title


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死の世界はスローモーション [ケロロ軍曹(止)]

 

 飛んでいった。
 散っていった。
 二度と動かなかった、あのひと。


 入隊志願者。
 なんて、相当の理由がない限り、よほどの馬鹿か、誇大妄想者か、
 偽善にまみれているとも知らずに盲目的に突き進む愛国者だろう。
 その中に俺も入っているのだから、やはり馬鹿なんだろう。
 兄貴も、親父も。
 友人も教官殿も。
 みんなみんな、馬鹿ばっかりだ。
 俺の周りにはその中でもとびきりの馬鹿ばかり集まってくる。

 何時まで経っても大人になれずに。
 何時まで経ってもわいわい騒ぎながら、ガキの頃のまま。
 時に笑い、時に怒り。
 心の痛みに無理やり塩を塗りこめるように、争いを繰り返して。
 俺たちには何の恨みもないはずなのに、倒れている敵を乗り越えながら、次を探す。
 冷酷になれなければ、死ぬのは自分だ。
 戦場で甘い感情など、持っていたらその時に死ぬ。
 死と隣り合わせになることを望んだのは、ただ身内が軍にいたからだろうか。


 目を閉じれば、いつだろうと浮かんでくるあの日々。
 出兵が重なり、訓練より易しいときも、対処しにくいときも、
 訓練にない身の振り方を覚えて柔軟に行動せねばならぬときも、それぞれ経験して。
 仲間の裏切りも、少なくとも経験した。
 その処罰さえさせられた。
 無意味な殺戮に意味などないと知りながら、躊躇わずに撃った。
 抵抗しない者や、民間人の骸も見て、
 なんと呆気ないのだろうと、半ば笑い出したくなることもあった。

 痛みは、ある程度を過ぎると感じなくなる。
 幾らだって受けられる。
 尋問、拷問になど屈しない。
 しかし、他人の痛みだけは別だ。
 泣き濡れた瞳が助けを訴え、しかもそれが同胞であるならば。
 こんなに惑うことはないと思っていた。
 何もいえず、何も行動せずにいた俺に業を煮やし、人質が敵の手にかかる。

 銃口を向けられたわけでもない。
 ただ、手を離されただけ。
 そんな単純な動きだけで、確実に致命傷を与えるだろう。
 ゆっくりと、汗が背中を伝う。
 駆け出した足も、もつれているかのように動かない。
 伸ばした手は、ほんの僅かに足りなくて。
 そしてあいつは、地に落ちた。

 


「いってー!! ひどいであります、夏美殿!」
「何がよ? 悪いのはアンタでしょ? アンタがきっちり掃除当番をやっておけば、
 私だってアンタをこんな風にっ」
「ゲロォー!?」
 ぐいぐい、と夏美が頬をつねり、全体を伸ばす。
 ケロン人の極限を試されているかのように、よく伸びる。
 その顔を見ておかしかったのかひとしきり笑うと、飽きたようでぽいと体を投げ捨てた。
 今度は頭をキャッチしたものの、ひどく踵を打ったらしく、
 しきりに叫ぶケロロは……正直かなりうっとうしい。

「あんがとさん。
 あーもう、夏美殿は凶暴であります。
 あんなに優しいママ殿から、なーんであんなボーリョク娘がっ」
「なんか言った?」
「イエイエ! 何も言っておりゃせんでございまするですよ!?」
「思いきり不自然な……」
「とにかく、きちんとリビング掃除機かけて、後風呂掃除もしなさいよ。
 サボってたらこんなもんじゃ済まさないからね!」
 びし、という効果音がつきそうなほど鋭く人差し指をケロロの前に突き出すと、
 つんと顔を背けて、部屋から出て行った。
 それまでニコニコと営業スマイルを貼り付けていたケロロだったが、
 夏美の姿が見えなくなると途端に、くにゃくにゃと床に倒れ付した。
「へ~い。あー、だっるー。ねーギロロ……」
「断る」
「まだ何にも言ってないじゃん!」
「どうせお前のことだから手伝えとかいうんだろう」
「そうだけど?」
 それがどうかした?
 と、当たり前のように聞きやがる。この野郎。
「自分でしろ。俺には関係ない」
 そんなー!
 叫び声が背中に浴びせられようが、俺は日向家の掃除当番を受け持ったつもりはない。
 だが…………

 

 愛すべき馬鹿にせいぜい休息を。
 それくらい祈ってやってもいいだろう。

 

お題提供 哀婉


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足りない何かを埋めるように [ケロロ軍曹(止)]


「マジありえねー!」
「あっはっは! そ、そんなに笑ったら失礼ですよぅ」
「ゲロゲロゲロ――ギロロが王子! 王子って!」


 夏美殿のご友人から惚れられてしまったという我が小隊の突撃兵である、ギロロ伍長。
 原因は我輩たちが作ってしまったというものの、宇宙お好み焼きやら宇宙たこ焼きやら、
 災難が続く娘さんであります。
 いや、ギロロがかませ犬体質だからよくないのかもしんないけど。
 ケロン人の中でも、まーまー見れる顔立ちだし、本人は無意識……じゃない、
 格好つけてるよあれは。
 自分が好きなハードボイルド調を目指して生きているし、
 それなりに戦場でも頼りになる奴なので、魅力はあるっちゃああるんだけど。
 …………ギロロだし。
 我輩たちからすると、すぐに赤くなって(体色もあるんだけど)、
 恐がりで、ウナギが駄目で、本気で好きになった子には大したアピールも出来ないヘタレ。
 その割には、たまにクサイ台詞を堂々と吐いたりしてワケわかんないトコもある、
 そんな幼馴染としては、良いところも知っている半分悪いところも分かっちゃってるから、
 誰かからあんな風に思われていると知ったら、おかしくって。
 そんなわけで、一件落着した今、思い出してしまって再度笑っているところなのであります。

「ケロロ君、駄目だよー。ギロロ君あれでも結構気にしてたみたいだし」
「ぶふふっ。ギロロのクセにいっちょ前にぃー」
「ははっ。……でも伍長さんって、結構モテそうですよね?」
「「え?」」
 笑いがようやく収まったらしく、目の端にこぼれた涙をぬぐいながらタママが聞いてくる。
「だって硬派だし。声も良いし、銃の腕も良いんですよね?
 がっかりする人もたまにいるかもしれないけど、あんな風に恐がりだとか
 いつもと違う一面も持ち合わせているとなれば、人気高いんじゃないですか?」
「あーっと、確かにそうだったっけ?」
「うん、ギロロ君モテたと思うよ。思うんだけど……」
 ドロロが昔を思い出し、複雑な表情を作った。
「「鈍いんだよねー」」
「それっぽいっすねー」
「ギロロがあんな感じでしょ? 好きになった子も言い出せなくてさ。
 見てる第三者からはじれったいっていうか」
 うんうん、といった調子で頷くと、困ったようにまたドロロが笑った。
「僕なんか一度、これ渡してって言われて、代わりに手紙渡したことがあるよ。
 でも、用があるなら今言えって……僕からだって思い込んだりして」
「あの鈍さは筋金入りでありますからなあ。頑固なトコも」
「恐がりなところも」
 ぷぷぷ、と三人で示し合わせたように笑っていると、
 どこからか荒っぽい足音が聞こえてきそうなので、早々に話題の対象を変えることにする。

「でもさー、タママだってモテるよねー。この若さで軍に入って、先行部隊に配属でしょ。
 実力はあるんだし、何かないのー?」
「僕は軍曹さん一筋ですし、今のところ恋愛は面倒くさいんで」
「うっわ、モテる奴の言い分! やだやだ。あ、じゃあドロロは?
 そーいえば学校別々になったから、しばらく分かってないんだけどさ。思い人とかいないわけ?」
「ええっ、僕? やだなあ、誰もいないよ。恋人とかもいないし、好きな人も――」
 焦ったように目線を逸らし、僅かに頬が桃色に染まるドロロ。
 それを見て、すかさず茶化すことにする。
「あ、赤くなった!」
「誰かいるんですね! それか、誰か泣かしたんですか。拙者は修行中の身ゆえ、とか言ったりして」
「え…………ッ!!」
 完全に固まってしまったドロロを見て、まずいことをした
 という顔になったタママだったが、もう遅い。
「タママくぅ~ん」
「はいぃ…」
「当てちゃダメだよー、ドロロとか簡単に予測つきそうな性格してんじゃん。
 そこはさらっと流さないと、思いつめるんだからー」
 日ごろトラウマスイッチを何回も押してる自分にしては勝手な言い分かもしれないが、
 ドロロはかなり繊細なのだ。
 でも我輩が本当にまずいかなと思ったときは
 意外とけろりとしていたりして、芯は強いのだとは思う。

「僕って、そんなに読まれやすいの? そんな単純なの? アサシンとしてどうなの……」
「どっちにしろ落ち込んでるですぅ」
「やっべ。放っておこ。そうして人は成長していくんでありますよ」
「無理やりいい話っぽく纏めようとしてますね。まあいいです。じゃあ、軍曹さんは?」
 昔を振り返っても、そこまで色めいた思い出……なんてない。
 初恋の淡い思い出とかならあるけど、恋人がいたとか、
 誰かから告白されたとか……ちっともない!
「我輩でありますか? んー、そこまでモテモテではなかったでありますよ」
「嘘でしょ? あの頃の軍曹さん、軍内でも評判だったんですよぉ?」
「いやいや、やっぱり我輩も軍人でありますから?
 浮き足立った態度ではいられないんでありますよ。
 何つうの? 我輩を好きなら我輩好みになれっていうかぁ?」
「へー」
「タママ君さ……、興味なさそうね」
 音を立ててコーラを飲んでいる様子に、昨今の新入社員の態度の悪さに
 悩む上司の気持ちが分かっちゃったよ。

「えー。そうでもないですけどー」
「えええ……」
「あ、じゃあクルル先輩は?」
 クルル?
「分かんないでありますよ。でも、うわさでは意外とモテたらしいけど」
「性格は難ありとしても、まあ顔だけはいいっスからねえ。声も」
 遠い目をしながらパソコンのほうへ目をやる。
 そこで何やら怪しい作業をしていることだってあるから。
「そうそう、問題は性格だよね」
「いつもカレー食べてて、栄養管理なんて眼中になさそうだし」
「嫌がらせをモットーにしてるし」
「笑い方変だし」
「敵多そうだし」
「電波だし」

 そこまで言って、また二人とも吹き出した。
「あっはっはっはっは!」
「やっぱりクルルが誰かを好きになるとかありえねー!」
「え……でも、さ」
「あれ、ドロロ立ち直ったんだ」
「気づかなかったですう」
 勝手な言い分にしばし涙目になったドロロは、気を持ち直して不謹慎なことを
 言ったかのようにたしなめた。
「クルルくんってさ。毎年お花買ってるんだよ」
「ええ? 鼻?」
「お花だよ。目一杯。それをどこかに届けてるのかは知らないけど、
 宇宙人街とか、ネット通販とか、普通に花屋とかで手に入れてるんだ」
「クルルだよ? あのクルルだよ? 恋人とかに花届けるなんて気障な真似――」
 そこまで言って、ある可能性に行き着いた。
 もしかしたら、恋人じゃなかったとしたら?
「片思い、とか? それもありえなさそう」
「まさか…………いつか結婚しようね、とか約束してたけど、先に亡くなっちゃった大切な人とか?」
「「…………」」
「あー」

 まさかね。
 そんな気の利いたことをするわけないし、
 そこまでドラマみたいな話が早々転がっているわけがない。
 ましてやあのクルルだ。
 たとえそんなことがあっても、律儀に花を届けないだろうし、すぐに忘れてしまうやも。

「クルルにからかわれてるんでありますよ。最後まで嫌な奴なんだから。
 それがあいつの美学なんだからさっ。気にすることないって」
 でもそれが振りだったら?
 自分の弱さを隠すために被った仮面だとしたら?
 次々に湧いてきた問いは行き場所を失った。
 誰か、我輩の答えを肯定してよ。
「そ、そう――かな」
「さっすが軍曹さん。隊長は引っかからないですぅ」
 あはは、と力ない笑みがこぼれる。
 二人とも、もしかしてという疑問が頭の中を支配しているのだろう。
 我輩だって、クルルのことなんか、分かるわけがない。
 でも、もし。
 もしもそんな枷があるならば。
 誰か力になれますように。
 我輩でも、誰でもいいから。

 

~クルルズラボにて

「あん? 何だこれ……」
 わいわいとはしゃぐケロロ三人たちの会話を含め、
 日向家の周辺にはいたるところに監視カメラが着いていて、好きなときに見ることが出来る。
 今日もモニターを何やら動かしていたが、やがて自分の話題になったらしく、
 とりあえずそのままにしておいたのだが。
「見てたのかよ、ドロロ先輩」
 チッ、と短い舌打ちの音が、機械に囲まれたどうにも生活観のない部屋に響き渡る。
「俺様がそんな女々しいマネ、するわけねーだろ?」
 あの大量に花を買い込むのは、夏美の写真やら秋の写真を撮るときの素材として使うのだ。
 加工技術で幾らでもできるが、実際にそれを見て喜ぶ者の顔は、やはり実際に限る。
「それに花は……いくらでも使い道があるしな」


 そう、いくらでも使いようがあるのだ。
 食すためだろうが、演出だろうが、偽装であろうとも。
 たとえば、この血塗れの体を覆い隠すことだって。


 

お題提供 Noina Title
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生きて、る [ケロロ軍曹(止)]


 耳元から聞こえてくる荒い息遣い。
 足元からは不快な感触、鉄のにおいが満ちたこの土地
 左目は熱く、ただれたように感覚がない。
 ずる、と背中から重みが抜けた。
 同時にどさりと落ちた音がして、とうとう逝ってしまったのかと、ろくに働かない頭が認識した。


「第一分隊、第五分隊、第八分隊、全滅。
 消息不明、第四分隊、第六分隊、第七分隊。
 第二分隊、第三分隊を率いて本隊に合流する。以上」
「了解。
 敵軍数、五、六十ノ兵ガ我軍ノ、元本部ノ位置ニ集合。
 現状ニ伴イ、残ッテイル分隊ノ中カラ十人ヲ動員シテノ殲滅ヲ命ズ」
「……ッ!
 了解しました」

 ぎり、と歯噛みする音が後ろから聞こえる。
 それもそのはず。
 今の通信からして、激戦により極端に数が減ったと予測されるこの状況で、
 しかも分隊を二つしか本隊に合流させることができないと言っているにもかかわらず、
 その中から十人だけを連れて行き、約五倍の敵を殲滅させろという。
 戦場において、戦法や天気、兵の能力しだいで戦局が大いに変わるとはいえ、余りな仕打ちだろう。
 何が現状に伴い、だ。きちんと現状を把握する頭脳など備わっていないんじゃないか。
 適当に命令するだけの能無しめ。
 ケロロはそう叫んでやりたくなったが、部下たちの手前そうもいかない。
 その代わりに、血気に逸る幼馴染が叫んだ。

「本部は一体何を考えているんだ!
 十人だと! 今何人残っているのか分かっているのか!?」
 現実として無線機の向こうでは、
 上層部がお茶を飲みながら、盤上のチェスの駒でも動かしているのかもしれない。
 一方、分隊の指揮を任されたケロロの下には、本人を含めて十七人しかいなかった。
「七人……本隊に合流を命じる。敵地に乗り込む十人は…………」
 気まずそうに目線を泳がしながら言うケロロの前で、十六人全員が手を上げた。
 こんなに真っ直ぐな目をした若者たちが死に行くのを、黙って了承しないといけないのか。
 己が采配を振ったばかりに、どれだけの命を失わせたのだろう。
 だが自分を責めている時間すらも惜しかった。
 情報が入ったなら直ちに動かないと、いつ敵が移動してしまうか分からないのだ。
「負傷が少ない者を、優先する。だから君たちは」

 ね?

 そういって目配せすると、仲間に肩を貸してもらっていた二等兵と、
 背負われた上等兵が絶望的だという顔でこちらを見た。
「いえ! まだ歩けます、指揮官!
 自分はたとえ這ってでも敵地に赴いて…ッ」
「馬鹿者」
 いつもなら口うるさく大声で怒鳴り散らす上官に、思わず二人は口をつぐんだ。
「敵地においては少数精鋭で事に至らねばなるまい。
 その中で貴様らが足手まといだということが分からんのか。
 戦局を読み違えるな」
「――ギロロ!」
 たしなめるように睨むと、視線を合わせることなく歩き出した。
 命じられた、戦地の方向へと。

 悔しそうに唇をかむ兵たちに、優しく微笑んだ。
 この状況で、こんな表情をしていられるなんて、自分でも信じられなかった。
「ごめんであります。伍長は君たちを死なせたくないから、ああ言っているんであります。
 分かるよね?」
「分かっているであります、指揮官。……いえ、ケロロ軍曹殿」
「何でありますか」
「どうか、ご無事で」
 同じように微笑み返すと、敬礼を残して歩いていく。
 仲間の背から降りて、痛々しく、しかし力強く。
 その背を見て、思わず言葉を失った仲間たちに手早く指示を出していった。

「君…君、君、君、君、そしてタママ二等兵」
「な……! 何故ですか! 僕はまだまだ戦えますぅ!
 足手まといなんかにはなりませんし…第一、九人で行くつもりですか!
 伍長さんのほうが負傷してるじゃないですかぁ!」
 涙目になりながら迫る部下に、本当はこんなことを言いたくはなかった。
「まだ若い貴君には無限に可能性がある。
 それに、傷ついた兵たちを守ってやってほしいんであります。
 捕らえて、情報を聞き出そうとする輩から守ってほしいんでありますよ」
 何も言うことがないようだった。
 思いついたように口を開いては閉じる。その動作を何度も繰り返す。
 やがてその仕草をやめたのをきっかけに、全員を見回した。
「異論はないでありますね。
 では直ちに本隊に合流せよ。その八人は我輩と一緒に。
 大丈夫。永久の別れじゃないんだから。必ず、戻るでありますよ」

 そう。
 何度だってくぐりぬてきた修羅場。
 何度だって駆け抜けてきた戦場。
 絶対とは言わない。
 けれど絶望なんてしない。
 諦めるなんて、考えやしない。
 互いに高めあってきた信頼し得る仲間のところに戻るのに、
 先に旅立つなんてことは口にするべきではない。


「ギロロ~。駄目であります。まだ経験が浅い兵にアレはきついでありますよ」
 ようやく追いついたギロロは、疲弊しきった兵たちに足並みをそろえようともしない。
 軽く息切れをしているケロロが横で文句を述べようとも、テンポは変わらなかった。
「ふん。あれ位でへこたれるようなら軍なぞやめればいいんだ」
「ギロロって、他人に甘くて自分に厳しいよねー」
 ゲロゲロ、と意地悪く笑うケロロに、ようやくギロロは目線をやった。
「反対じゃないのか?」
「指揮官たる我輩をたてるため、なーんて事は性格上ないんでありましょうが、
 ああ言った方が分かれやすくなったのは確実。
 遠まわしに言うよりも自分ひとりが憎まれ役を買って出たほうが、事が運びやすい」
「…………」
「いつだって"損"な道ばっかり取っていくやつでありますな。伍長って」
「知らなかったな。そんな阿呆がいるのか」
「……ぷ」
 おかしくて、涙が出てくる。
 あくまでも格好つけたがりで、不器用なこの幼馴染は。
 戦場で赤い悪魔として恐れられているとは到底思えない。
「あっはっは! ゲロ~、だっさ! ギロロダサイ!
 ダサ達磨!」

 アハハ、と腹を抱えて笑い出した指揮官に、周りの兵たちがぎょっとしたように目を見張る。
 何があったんだと目配せし、気づいたように嗜めた。
「駄目ですよ指揮官! 敵に聞かれます!」
「ゲ、ゲロ……大丈夫でありますよ。
 我軍の元本部にあれだけの人数が行ったという事は、
 かなり大掛かりに、重装備で動いていったはずであります。
 つまりは情報伝達が上手くいかず、いまだに我軍が待機したままだと思っていたか、
 殲滅したと思っていたのでありましょう。
 まあ何にせよ、待機したままだと思っていたなら少なすぎるし、
 殲滅したと思っていたなら軍備を調達しようとやってきたのかもしれない。
 どちらにせよ我軍の敵というには余りにお粗末な動きをする奴でありますよ。
 かなり油断していると思って間違いないであります。
 気づいて奇兵を配置するのも、もう少し後でありましょう。
 ま、我輩たちの相手としては結構厄介なのでありますが」

 笑いながらも、敵を推察していた自分たちの指揮官を、
 改めて畏怖の念で見ていた兵たちは、最後の言葉を聞いて気を引き締めた。
「大丈夫でありますよ。
 この星の政府はかなり評判が悪かったらしくて義勇兵も集まらなかったらしいし、
 ケロン軍に宣戦布告したときは、かなりの話題をさらったでありますしなあ。
 でも、技術力とかは進んでなくても、結構体力あるし、
 意外に兵法に通じていたから、こんなに苦戦しているわけでありますけど」
「ごちゃごちゃと五月蝿いぞ。さっさと足を進めろ。
 仮にも指揮官が、そんなヘラヘラしていていいと思っているのか」
「へーへー。全く達磨のクセに口煩いったら。小姑みたい」
「聞こえたぞ!」
「きゃ、ギロロー。敵地で何大声出してんのー。ばっかみたい、でありまーす」
 先ほどまでの自分を棚に上げ、あっかんべー、と子供っぽい仕草でこちらを挑発してくる、
 仮にも上官、なケロロに対して思わず銃口を向けそうになる。
 慌てて押された手をみると、部下たちの必死な顔が目に映り、なんとか怒りを飲み下した。
「くそ……あの馬鹿。戻ったら思う存分説教してやる」

 

「しっかりしろ。おい!」
 だらりと腕がたれ、虚ろに開かれた目に光は戻らなかった。
 橙色の体に、赤黒い染みのようにこびりついた血をぬぐうと、瞼を閉じてやった。
「こんなところでは落ち着いて眠れないだろうがな。
 遺体は引き取りに来てやる。だから安心して休め」
「伍長、こちらもまだ息があります!」
「分かった。連れて帰れるか? よし。
 じゃあ、あの馬鹿は俺が背負う。ほかの者は、まだ息がある兵がいないか探せ!」
「了解であります!」

「おい、ケロロ」
「なに」
「何じゃないだろう。早く指示を出せ。本部に帰るぞ」
 そういうと、のろのろと頭を上げたケロロの目に、返り血を浴びたギロロが映った。
 報告によれば五、六十だったはずなのに、百名近くの敵兵。
 後から知ったところによると、どうやらそこに敵軍のほぼ全員が集結していたらしい。
 一兵士に弾薬庫へと爆弾を仕掛けさせ、二十名以上が死亡。
 思わぬ奇襲に戸惑っているところに、五名が飛び出し、各自十五人程度を討ち取り、
 二名は本陣の大将のところへ。
 シンプルで分かりやすい戦略。
 疲れきっているというのに、ギロロは早々に飛び出して、
 あっというまに五人の息の根を止め、倒れた仲間の敵の相手をして、
 計四十くらい倒したのではないだろうか。

 何とか、がむしゃらに倒して終わった。
 虚しさと、喪失感が一気に襲ってくる。
 重いため息とともにその気持ちを吐き出すようにして、勢いよく立ち上がった。
「大丈夫でありますか? その目……ごめんね」
 我を失ったケロロの剣に傷つけられた左目からは、血が流れて目を開けることができなかった。
 固まってはきているものの、わざわざ無理に目を開けて悪化させることもないだろう。
「何ともない。大体お前ごときにやられる俺じゃない。過信するのも、いい加減にしろ」
 嘘をついているときには、口数が多くなる。
 そんな友人を見て、口の端を上げた。
「生きてるんだよね、ギロロ」
「……? ああ」
「死んでないであります」


 晴れ上がったこの清い大空を、地に穢れた大地から眺めている自分たちがいる。
 ちゃんと仲間の声も聞こえる。
 生きている。
 それが何より、嬉しかった。

 

お題提供 月と戯れる猫

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き 聞こえるよ、君の声 [ケロロ軍曹(止)]

「ボケガエル! 掃除しなさい!」
「やったであります! 掃除してから汚したんでしょーがっ! 何でもかんでも我輩に言うのやめてよね!」
「アンタがいっつも誤解されるようなことしてるから悪いんでしょ?」
「毎回毎回毎回毎回! きっちりやってるであります、たま~に忘れるだけでありましょうに!
 些細なこともネチネチと憶えているとは、さっすが地球人、しつこくて嫌になっちゃうでありますなー」
「なん、ですって~?」
「ゲ、ゲロ・・・・・・とにかく、我輩はきちんと掃除したの!
 片付けてあげてもいいでありますけど、そのまえにきちんとやってたんだからね。そこんとこ、よろしく頼むであります」

「モア殿ーモア殿ーッ! どこでありますかー」
「ここです、おじさま。どうされたんですか? っていうか、興味津々?」
「これこれ! 新しく届いたゲームなんでありますよ! 暇だったら一緒にするであります」
「あーごめんなさいです、おじさま。モア今からおつかいに行く途中なんです。っていうか残念無念・・・・・・」
「ありゃー・・・・・・それなら仕方ないでありますな。大丈夫、また遊ぶでありますよー。
 今度は我輩も一緒に買い物に行くでありますっ」
「はい!」

「冬樹殿ー」
「どうしたの軍曹?」
「このゲーム、一緒にしようヨー。新発売だけど、メッチャ面白いって評判なんでありますよっ」
「んー、この記事纏め終わってからじゃだめ? ちょっと宿題が多くって・・・」
「じゃあ早く終わらせるでありますっ。頑張ってねー冬樹殿ー」
「ありがと、軍曹」

「赤だるまー赤だるまー赤だるまっさんはいますかね?」
「・・・・・・・・・」
「あり?」
「ニャ?」
「これはこれは、猫殿。ギロロどこに行ったか知らないでありますか?」
「ニャア、ニャー」
「・・・・・・さっぱり分かんないんすけど。あー、宇宙人街とか、訓練とかで忙しいのかなー」
「ニャッ」
「でありますか。じゃあ、また来ると伝えておいて欲しいでありますよっ」
「ニャニャウ!」

「黄色く~ん、きいろくぅ~ん。ゲームしなぁい?」
「やなこった。俺はコレでも忙しいんでね。一人で遊んでなよ。クックック・・・」
「もー、皆して用があるんだからなあ。タママ二等も、今日は桃華殿と新施設の記念パーチーとかでいないし」
「ククッ。見事にいないねえ」
「そうでありましょう? ねえ、クルル遊ぼうよー。クルルだったら片手間にでもできるでありましょうに」
「いいのかい? 本部への報告書、穴が無いように作ってるってのに」
「ゲロォー!! そ、それはいかんでありますな。じゃあクルル君、しっかり頑張ってくれたまえ」
「クックックッ・・・・・・」

「はあ。みごっとに一人ぃ? いっか、一人でも出来るゲームだし、まだ作ってないガンプラもあったかな。
 あ、ゲロロ艦長の予約してないじゃん! やっべえ」
「軍曹、ぐんそー?」
「ん、あの声は」
「ぐんそーう、どこー? 宿題終わったよー」
「冬樹殿! ここでありますよーぅ。ヤフ~♪ 待ってました。やろやろー」
「うん! 負けないよー」
「にゃにおう! 我輩に勝てると思うてか、ちょこざいなっ」
「軍曹、おっかしいー」


今日も、家からは彼らの声が聞こえる。
いつでも、仲間を呼ぶ声が。
そして、それに必ず答える友人の声が。

「だから・・・・・・何でその中に拙者は入っていないんでござるか?」

待つしかないですねー、呼ばれるの。
まあ呼ばれてないのに出て行くっていう手もあるんですけど、ね。

「ケロロく~ん・・・・・・拙者、ここにいるんだけど。あのー」

気づかれてないと、ちょっと、ねえ?


お題提供 哀婉


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