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甘美な色をした、 [今日からマ王!]

 

―― 好きな人が傍にいるときに、降りてくる花びらを掴むとね、ずっと一緒にいれるのよ。

 じゃあ、すでにそうなっている人は?
 そうおれが聞くと、あらなあに? ゆーちゃんたらもうそんな人がいるの? いつかママにも紹介してね、なんて言う。
 違うよって言っても、いいのよ照れなくてもなんてくすくす笑って流されてしまった。



「あれ、結局どうだったんだっけー」
「何の話ですか?」
「・・・・・・」
「お前は脈絡もなく喋りだすんだな、ユーリ」
「何か分からないことでもございましたか?」

 ぽつりと漏らしたおれの呟きを拾ったのは、コンラッド、ヴォルフラム、
 そして教育者の顔になったギュンターだった。
 グウェンダルはただ上を見上げているばかりで、話を聞いていたのかは分からない。
 上には満開の桜の花。
 これはおれのポケットに入っていた桜を、アニシナさんの植物栄養剤で大きくしちゃった代物で、
 今のところ悪影響は及んでいないらしく、去年と同じように地球よりも僅かに遅い時期に咲き始め、
 丁度見ごろになったのだった。
 下には豪華なお弁当。
 例のごとく、始終気難しい顔をして黙っているグウェンダルが作ってくれた物で、相変わらずとても美味しい。

 去年見事だと話題になった桜の花は、今年是非とも花見をしたいと長蛇の列が出来るほど
 花見参加を願い出る人が多く、それならばと何回かに分けて花見をしようかということになった。
 今日はその初日目。
 貴族達からの花見希望も出ていて、一般兵や、抽選で当たった国民が固くならないようにと、
 初日に貴族の花見希望者を集めることになった。
 同じようにおれたちも参加したのだが、気を遣ってくれたのか、おれたちのまわりだけがぽっかりと開いている。


「そんなに離れなくてもいいのにな」
「子連れで来ている者もおりますし、陛下の御前で粗相でもするのではないかと不安にもなりましょう」
「そういうもん? おれ気にしないのに。幼稚園とか通ってたし、子どもの集団には慣れてるよ?」
 泥遊びしてる子どもとか、高いところに登る子どもとか、大声で走り回る子どもとか。むしろおれ。
「なんとお優しい・・・!」
「ならば、来年はもっと人が集まるように配分も考えないといけませんね」
「本当に誰彼構わず引っ付ける浮気者だな、ユーリは!」
「なんだよ」
 そうは言ったものの、ヴォルフラムは怒った目も、呆れたような目もしていなかった。
 コンラッドと同じような目で、何だか見守るような目だ。

「あ、早いですね」
 ひらりひらりと、白っぽい花びらが風に煽られて落ちてくる。
 気づいたコンラッドの目線を追って、おれも辿るうち、
 お袋がいつだったか言ったおまじないらしき話を思い出した。
 ふわり、また降りて今度はヴォルフラムの頭を飾った。
 もう一枚舞って、ギュンターの杯の中を彩る。
「風流ですね」
「なんかそれだけで味が変わった感じがするよな」
 こくりと嬉しそうに味わったギュンターの頬が淡く色づく。

「花見って何日あるんだっけ?」
「四日です。今日が初日ですから、あと三日ですね」
「なら最終日が一番綺麗かもしれないなあ」
「花が落ちてしまう時期なのにか?」
 ヴォルフラムが不思議そうに聞く。
「うん。そうなんだけど・・・花びらが風に乗って落ちる風景を花吹雪っていうんだよ。それも凄く綺麗なんだ」
「なるほど。分かる気がします。一つを見ると白っぽいし、まるで雪みたいだ」
「吹雪ということはたくさん落ちるんだな」
「そう。一気に咲いて、一斉に散る」
「・・・・・・思い切りのいい花だな」
 それまでほとんど喋らなかったグウェンダルが、ぽそりと呟いた。
「けれど少し寂しい気もしますね」
「太く短く。いい人生ではありませんか」
「ギュンターは太く長くって感じだな」
「それほどでも」
「待て、それは褒めていたのか。コンラッド?」
 さあ? とコンラッドは爽やかに笑った。


「ほっ、やっ、とっと・・・」
「・・・一体何の踊りだ?」
 今度こそ呆れたように見たヴォルフラムの気持ちを代弁したように、グウェンダルが聞いてくる。
 踊ってねーよ。
「花びらをとってたの。・・・・・・っよし!」
 意外と地味なことに嵌まってしまったりする。
 握りこぶしの中にはくしゃくしゃにならず、綺麗なままの花びらがきちんと収まっていた。

―― 好きな人が傍にいるときに、降りてくる花びらを掴むとね、ずっと一緒にいれるのよ。

 この場合は、どうなんだろう。
 ずっと一緒にいたい人が、たくさんいる場合は。
 同じように、効いてくれるのだろうか。


「意外と難しいですね。・・・取れた」
 ほら、お揃いと差し出してきたコンラッドの手のひらにも花びらが乗っていた。
「あ、ずるいぞコンラート! 僕だって!」
 えいえいと何回も失敗してようやくヴォルフラムも掴む。
 ほら見ろ! と差し出してきた花びらの端っこがつぶれていたのは、この際見なかったことにしよう。
「二枚取れましたよ」
 嬉しそうにギュンターも差し出して、動こうとしないグウェンダルの手のひらに、一枚落とす。
 それと同時に、グウェンダルの髪の先に花びらが絡まった。
 ぷっと吹き出したおれに、何事だと眉間に皺を寄せるグウェンダルの顔も、
 花びらがアクセントになって、ちっとも凄みが無かった。


 傍にいる、この大好きな人たちと、どうか一緒に。
 ずっと一緒にいれますように。

 


お題提供 月と戯れる猫


 


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硝子のような君 [自作の詩]



脅えたように辺りを見回す まるで子兎のようだと思ったのが第一印象でした

照れた時に 目が細くなる笑顔を見せてくれるのが好きでした
笑った時に 達観したように静かに輝く瞳が好きでした
怒った時に 二度と口を利いてもらえないのではと思うくらい迫力ある君が好きでした
泣いた時に 何もかもを拒絶して寄せ付けない姿が好きでした
考える時に 必ずこちらを見つめてくる癖が好きでした

こちらを見るときに ふわりと笑うのも
落ち込んでいるときに お疲れさまって言ってくれるのも
疲れているときに 黙って傍らに座っていてくれるのも
全部好き

たまらなくなって 我慢して
純粋な君を何かの色に染まらせたくないと
自分を叱咤しながら

でも ひっそりと泣く姿を初めて見た時に
自分だけが慰めたいのだと
自分だけが癒す存在でありたいのだと
主張し始めた 厄介な心

結局 隣に座るくらいで
大したことは言えなかったけれど
その日からずっと焼きついてしまった君の顔
それから目で追ううちに
抱きしめたくなることも 気に障ることも目にして
とても力強いのだと気づいた 支えなんて必要ないほど
それでも脆いのだと気づいた 時折困ったように目線をどこかへ彷徨わせる


付き合おう
そう先走ってしまった一言を 恐れていたように目を見開く君
ごめんね それだけのやり取りだったのに
襲った衝撃
当たり前だろう? 君も好きでいてくれたなんて確証はない
当たり前だろう? 何故今言ってしまったかが分からない
当たり前だろう? 断られるなんて決まりきった事だった
それなのに 何故此処まで泣けてくる
誰も踏み込めない 誰も慰める事の出来ない
甘い痛みを抱えて時は過ぎていく

関わりあえない日々が辛くて
友達と一緒に話しかけた
苦しそうにしながらも いつもの通りに反応を返してくれる君にほっとしたけど
やっぱり痛い


皆で星空を見上げながら
小さな声で囁いた
未練がましくて 本当にごめん
将来の夢はなあに?
笑顔を意識しながら 脅えさせないように言った
罪悪感なんて間違っても 浮かばせてはいけない
戸惑う君に 泣いていたあの脆い君を思い出して
また要らない一言が飛び出す

俺はね 好きな人と一緒に転ぶことなんだ
気障だなんて分かっているさ
格好つけたがりで はたから見れば滑稽だ
それは自分が一番分かっている
それでも諦めきれずにはいれないだろう?
だって失敗するのが前提なんだ

喧嘩して 転んで 泣いて 互いに怒ったとしても
ずっと一緒にいて もっと君を知っていく
それが夢なんだ
他にも夢はある
それでもずっと一緒にいたいっていうのが一番強い
好きで好きで 仕方ない

聞いてもいいだろうか
これは本当に純粋な興味だよ
君の将来はどうなっていてほしい?
沈黙が襲う
やっぱり余計な事を言ってしまったな
反省した時にはもう遅い
暗闇に目が慣れて 頬を滑っていた雫に今更気づく
慌てて何か言おうとしたら 言葉が紡がれた
貴方と一緒に転ぶ事

たまらなくなって
逃げださないように 捕まえながら口付ける
ごめんなさい 許してください
それは俺の台詞だろうに 本当に敵わない
最初から君に怒れるはずがないでしょう?

気持ちを受け入れてくれて本当に
ありがとう
ぴったり言葉が重なって
どちらからともなく笑い出した

 

お題提供 Noina Title

 


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待たせてごめんね [自作の詩]

 

照れた時に 髪の毛をくしゃりとする動作が好きでした
笑った時に 幸せを集めたように輝く瞳が好きでした
拗ねた時に 子どもっぽくなる貴方が好きでした
褒めた時に 思わず物を蹴飛ばすほど慌てる姿が好きでした
考える時に 必ず右上に視線を向ける癖が好きでした

こちらを見るときに ふわりと笑うのも
泣いているときに さりげなく隣に座ってくれるのも
落ち込んでいるときに 頑張ったねって言ってくれるのも
疲れているときに 黙って頭を撫でてくれるのも
全部好き

ごめんね
そう言った時に 傷ついたあの瞳と
気にしないでと 悲しみを押し殺した表情をさせた私が嫌い
困ったような顔をして それでも笑いながら
今日は帰るねと 責めずに後ろを向いた時の背中が忘れられない
どことなく 肩が震えていたような気がして
その後で 事情を知らない友達に
おろおろと構われている姿にも嫉妬した 私が益々嫌い

好きなんです
心から 溢れだすくらいに
大好きなんです
胸が 張り裂けそうなくらい
また逢いたい 一緒になりたい
そんな気持ちがずっと積み重なって

付き合おう
そんな一言さえ 夢に見て泣いていた私に
叶ってしまった 貴方の心
まだ駄目なんです

有耶無耶にしたまま
勢いで戻ってしまった前の関係
再度二人になれば
違う人を好きになってしまったんだと告白されるようで また恐い
ごめんね 馬鹿で


皆で星空を見上げながら
小さな声で囁かれた
将来の夢はなあに?
戸惑っていたら ふと笑いかけられた
俺はね 好きな人と一緒に転ぶことなんだ
戸惑っていたら さらに笑みを深めた

失敗するのが前提なんだ
喧嘩して 転んで 泣いて 互いに怒ったとしても
ずっと一緒にいて もっとお互いを知っていく
ね 最高の夢だろう?

聞いてもいいかな
君の将来はどうなっていてほしい?
しばらくしてからまた聞かれた
待っていてくれた? 怒っていない?
零れた涙が暗闇で見えないことにほっとしながら
優しい貴方に甘えて 私もたっぷり沈黙してから答えた
貴方と一緒に転ぶ事

待たせてごめんね 臆病な私で
甘えて逃げてばかりいました こんな駄目な私でも
貴方は一緒にいてくれるでしょうか
そんな期待をこめながら 貴方の顔があるであろう空間を見つめる

微かに唇に触れた体温 慰めるように頭に置かれた手
ごめんなさい 今まで言えなくて
許してください そこまで言って溜息をつかれた
本当に君には敵わない
最初から怒れるはずがないでしょう?

ああ だいすき
ありがとう
そんな言葉が重なって
どちらからともなく笑い出した

お題提供 Noina Title
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何故とか、どうしてとか。理屈でどうこう言えるものじゃない [自作の詩]


夜風舞う 薄暗闇の中に佇む灯りのように
花びらを時折散らせ 悠々眠る老桜
澄んだ月光に照らされた姿を見て
どうしてか ぞくりと粟立った

手に持つグラスのとろりとした液体は赤いのに
染まらず青白いままの肌
血に濡れたように光る唇を見て
どうしてか 胸が軋んだ

小雨降る まるで自らが虹だというように
鯉を遊ばせる 気まぐれな橋
向こうにどっしり構えた城を見て
どうしてか 懐かしい気持ちに襲われた

風が攫う ぽんぽん弾む手鞠のように
今にも割れそうな笛の音を背景に
僅かに触れた細い手を見て
どうしてか じんと頭が痺れた

さらりと落ちた横髪
萌え出づる新芽
力尽きた松の枝
疲れ伏した瞳
掠れた声に

どこか諦めも交じった焦燥に 憧憬
恍惚とした恐怖 自虐
それらをぼんやり感じた
でも何故だか分からない
自分で自分が分からない


それならば そう
不可解なこの気持ちだって
今まで感じたことのない 胸の中で小鳥が騒いでいるようなこの気持ちも
きっといつか終わりがくるのだろう

張り詰めた緊迫感も
狂おしく吹き荒れる嵐も
何かがつかえたような圧迫感も
もう手の届かないところにある寂しさも
全部気のせいではないけれど

きっとそれは枕木のように
旅路の中で何度も何度も出くわす標識のようなもので
たまに転びそうになりながらも
駅を過ぎていくのだろう


考えていたことを話してご覧 と促され
言ってみたら
お前はどうも朧でいけないね と苦い顔で笑われた
その小鳥はいずれ死んでしまうけれど 生かすも殺すもお前次第だよ と言われ
ますます考え込んだ
なら 小鳥がもっと騒ぐようなことをしてみなさい
そうすれば ほら もっと頬が赤くなる

楽しそうにあの方が言うものだから
慌てて走り出した
近づくあの方が一番小鳥を騒がせる
なら離れてはいけないんだろうけど でも
もう無理だ あのままだと茹蛸になってしまう日が近くなる

不可解な 説明がつかないこの気持ち
あの方の遠い目に吸い込まれてしまうような錯覚
これはいつ消えるのだろう
苦しいから早く静まれ
そう思いながら私は崩れ落ちた

 

 

お題提供 Noina Title

 


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すこしだけ [自作の詩]


全てを覆いつくすような 息を呑む桃色の嵐
美しい花のじれったい幕引きを
隣で見ている 麗しい人
緑の黒髪の上に
ふわりと乗った花びら

幻想的だと眺めていたら
目に入ったなんて言いながら
ぶんぶんと犬のように頭を振り出した
ったくもう
綺麗なのはいいけれど こっちにまで飛んでこないで欲しいよねなんて
百年の恋も冷めるような 雰囲気ぶち壊しの発言に
僕は笑うしかない

分かっていたんだ 君はそんな人なんだって
全てが 僕の思い通りにはならないし
全ての 僕の好みどおりに立ち回ってくれるわけでもない
全くの 僕の機嫌を損ねない人というわけでもなし
それなのに

どうしてこんなに

何でもないよ
不思議そうに向けられた視線に 曖昧に首を振る
忌々しいほど満開に咲き誇る花が また散った
動きにあわせて 僕の頭からも花びらが零れていく
なんだか可愛いなんて 固まる僕をよそに抱きしめる君

ああ なんだ
君は確かにここにいる
落ち込む僕にも 怒る僕にも 悩む僕にも我関せずで
勝手に歌って 勝手に笑って 勝手に走る自由な君
温かい体温があって 鼓動を刻んでいる

もう何でもいいや
素直な君なんて気持ち悪いし
自己完結してしまった僕に
どういう意味だと怒ったように
君はだらしない笑顔の僕をその目に映す


鋭くて脆くて よごれている部分もあって
思い通りにならないから君が好き
一人きりで生きている君が好き
それでも皆を愛している君が好き

綺麗なばかりじゃない僕ですが
それでも少しでも君の心を動かせられたなら
ずっと傍にいてもいいですか

そんなたった一つの大事な願いを
繋げた右手に込めて きゅっと握り締めた小さな左手
驚いたようにはにかむように
花と同じくらい 頬を染めた君の横顔に
これは少しくらい期待してもいいのかな なんて
自惚れてしまう僕です

すこしだけ 本当にすこしだけ調子に乗ってみるので
生意気なんていわないで
どうか覚悟をしておいてください

 

お題提供 Noina Title

 


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